【登辞林】(登記関連用語集)


[と]

当座貸越(とうざかしこし) 当座勘定取引の付随契約として当座貸越契約を締結した場合に、当座預金残高を超過して預金者が振り出した手形・小切手の支払に設定した極度額まで金融機関が応じることにより実行される貸付。総合口座の預金担保貸付やカードローンといった当座勘定取引を前提とせずに一定限度まで貸付けを行う契約に基づく貸付も含まれる。

当座勘定取引 銀行が取引先から、手形・小切手の支払委託を受け、その支払のため、当座勘定を開設し、支払資金を受け入れる取引、又は、契約。当座勘定取引(契約)の法的性質については諸説あるが、そのひとつに、支払委託の委任契約と消費寄託混合契約であると解するものがある。

当座預金 手形や小切手を決済するための預金。無利息のため、預金保険法(昭和46年4月1日法律第34号)の決済用預金のひとつであり、預け入れ金融機関が破綻した場合でも全額保護される。

倒産隔離 (1)SPCが倒産するリスクを回避すること。又は、SPCが事実上の倒産状態に陥っても、倒産手続きが開始されないような措置を講じること。
(2)当初の資産保有者(オリジネーター)や、債権回収会社、信託会社等の関係当事者が倒産しても資産を保有するSPCに影響を与えないような処置を講ずること。保有資産をSPCに譲渡し、SPCにおいて資産価値を裏づけにした証券を発行し資金調達を行っている場合は、当初の資産保有者が資産譲渡後に倒産してしまっても、譲渡資産が差押えられるなどしてSPCが倒産の影響を受けないようにする必要がある。そのためには、資本関係を切断し、適正な価額で譲渡(真正売買)を行う必要があり、資本関係が切断されていなかったり、資産の譲渡が真正売買であることを否定され、担保目的の譲渡(譲渡担保)等とみなされると、その資産は、当初の資産保有者のものと判断される。資本関係の切断としては、かつては、ケイマン諸島において設立する会社(ケイマンSPC)が多く利用されていたが、海外とのやりとりを要し、又、ランニングコストも大きくかかることから、最近では、有限責任中間法人が多く利用されている。

動産質 動産をその目的物とする質権民法第352条〜第355条)。動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権を第三者に対抗することができず、質物の占有を奪われたときは、占有回収の訴えの方法によってのみ、質物の回復をすることができる(民法第352条、第353条)。同一の動産について複数の質権が設定されたときは、質権の順位は設定の前後による(民法第355条)。質権設定者に目的物の処分権限が無かった場合でも、即時取得により、質権は、有効に設定され得る。(→不動産質権

動産譲渡登記 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律に基づき、法人が有する動産の譲渡を登記することにより、第三者対抗要件を備えることを可能とする制度。民法上、第三者に対する動産譲渡の対抗要件として、引渡しが必要とされているが、その特則にあたる。これにより、大量の動産の一括譲渡が容易となり、企業の資金調達の一手段として用いられる。取扱法務局は、東京法務局民事行政部動産登録課のみで、全国の動産譲渡登記を取り扱う。

動産譲渡登記事項概要ファイル 動産・債権譲渡登記規則の規定により、動産譲渡登記を行った場合に、動産譲渡登記所からの通知により、譲渡人の本店等の所在地を管轄する法務局に備えられるファイル。登記番号、登記年月日、譲渡人・譲受人の表示等が記録され、譲渡された動産を特定する事項は記録されない。

動産譲渡登記ファイル 動産譲渡登記の登記事項を記録するため、動産譲渡登記所が備える磁気ディスクをもって調製されたファイルで、以下の事項が記録される。
1.譲渡人の商号(名称)、本店(主たる事務所)、外国会社の場合は、加えて、日本における営業所
2.譲受人の氏名(商号、名称)、住所(本店、主たる事務所)、外国会社の場合は、加えて、日本における営業所
3.動産譲渡登記の登記原因及びその日付
4.動産の種類等、動産・債権譲渡登記規則で定める動産を特定するために必要な事項
5.動産譲渡登記の存続期間
6.登記番号
7.登記の年月日

動産登録課(→東京法務局民事行政部動産登録課

動産の先取特権 特別の先取特権で、債務者の特定の動産を目的とする次に掲げるもの。
1.不動産賃貸の先取特権(賃料等、不動産の賃借人の債務に関し、賃借人の動産ついて存在する。)
2.旅館宿泊の先取特権(宿泊料等に関し、宿泊客の旅館にある手荷物について存在する。)
3.旅客又は荷物の運輸の先取特権(旅客又は荷物の運送賃等に関し、運送人の占有する荷物について存在する。)
4.動産保存の先取特権(動産の保存等のために要した費用に関し、その動産について存在する。)
5.動産売買の先取特権(動産の代金等に関し、その動産について存在する。)
6.種苗又は肥料の供給の先取特権(種苗又は肥料の代金等に関し、その種苗又は肥料を用いた後1年内にこれを用いた土地から生じた果実について存在する。)
7.農業労務の先取特権(その労務に従事する者の最後の1年間の賃金に関し、その労務によって生じた果実について存在する。)
8.工業労務の先取特権(その労務に従事する者の最後の3ヶ月間の賃金に関し、その労務によって生じた製作物について存在する。)
動産の先取特権が競合する場合、優先順位は、第1が1〜3、第2が4、第3が5〜8の順序となる。

投資事業有限責任組合 投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成10年6月3日法律第90号)の規定に基づき、各当事者が出資をし、共同で、株式会社の株式の取得、事業者への貸付等の事業を行うことを約することによって効力を生ずる「投資事業有限責任組合契約」によって成立する組合(同法第2条第2項、第3条第1項)。無限責任組合員及び有限責任組合員からなり、民法の組合の特例と位置づけられる。組合契約が効力を生じたときは、登記をすることを要する(同法第17条)。
法制定時は、中小ベンチャー企業への投資促進を主眼としていたが、事業範囲が拡大され、中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律の一部を改正する法律(平成16年4月21日法律第34号)により、「中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律」が「投資事業有限責任組合契約に関する法律」と改題されたことに伴い、「中小企業等投資事業有限責任組合」も「投資事業有限責任組合」に改められた。(→有限責任事業組合

同時死亡の推定 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する制度(民法第32条の2)。必ずしも同一の原因によることを要しない。同時死亡の推定をうける場合、同時死亡者間には相続は生じない。又、同時死亡者間には、遺贈の効力も生じない(民法第994条)。推定にとどまるので、証明により覆すことができる。

同時履行の抗弁権 双務契約の当事者の一方は、相手方の債務が弁済期にない時を除き、相手方がその債務の履行の提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことが出来るとするもの(民法第533条)。この規定は、契約解除時の原状回復義務や、売買における売主の担保責任等に準用されている(民法第546条、第571条等)。
債務の弁済と受取証書の交付(民法486条)は、解釈上、同時履行の関係にたつとされる。賃貸借契約における賃貸人の修繕義務(民法606条)と賃借人の賃料支払義務は、相互に同時履行の抗弁権が認められる。建物の賃貸借契約終了後の敷金返還債務と建物の明渡義務について、判例は、明渡義務が先履行であり、同時履行の関係には立たないとする。
契約の一方の当事者と第三者との間ではこの抗弁権は認められないのが原則であるが、割賦販売法(昭和36年7月1日法律第159号)では、この特則を定め、商品の購入者等が、販売業者等に生じている事由をもって、支払を請求する信販会社等に対抗できるとされている(同法30条の4)。
ある請求に対して、請求を受けた者が裁判上でこの抗弁権を行使した時は、「請求を受けた者は、請求をする者が抗弁にかかる債務を履行することと引き換えに、債務を履行せよ」とする、引換給付判決がなされる。

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